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東京藝術大学が所蔵する主要なコレクションを紹介する展覧会を、 新学期にちなんで「新入生歓迎・春の名品選」と題して開催いたします。 この展覧会には、新入生たちに美術館の活動を知ってもらいたいという願いもさることながら、 上野を訪れる多くの一般鑑賞者に芸大コレクションの質の高さ、 幅の広さを知ってもらいたいという美術館としての願いがこめられています。 今後、この時期に開催する春季コレクション展は、 芸大の主要な名品が鑑賞できる機会として定着させていく予定ですが、 今年は、国宝、重要文化財を中心とした名作を古美術品から厳選し、 さらに明治から昭和にかけての各分野の代表作を加えた名品選といたします。 その中でも、修理後はじめて公開となる重要文化財 《小野雪見御幸絵巻》 の展示に際しては、 模本類なども合わせて展示し研究的成果をふまえた特集といたします。 また、近年新しく収蔵した作品についてもその一部をお披露目いたしますので、 企画展以外の美術館の活動を紹介する好機となることでしょう。
総点数およそ45点で構成する小規模な展覧会ですが、 芸大コレクションの精髄をお楽しみいただけるものと思います。
【主な出品作】
《絵因果経》(国宝)
《観世音寺資財帳》(国宝)
《小野雪見御幸絵巻》(重要文化財)
《菩薩立像》(重要文化財)
《金錯狩猟文銅筒》(重要文化財)
高橋由一《美人(花魁)》(重要文化財)
浅井忠《収穫》(重要文化財)
原田直次郎《靴屋の親爺》(重要文化財)
ヴィンチェンツォ・ラグーザ《日本婦人》
板谷波山《彩磁花卉文花瓶》
加山又造《倣北宋深山凍林》
長谷川潔《時 静物画》
会期:
2007年4月10日(火)-6月10日(日)
月曜日休館
ただし4月30日(月)は開館、
翌5月1日(火)を閉館
午前10時〜午後5時(入館は閉館の30分前まで)
会場:
東京藝術大学大学美術館 展示室2
主催:
東京藝術大学
観覧料:
一般 300 (250)円
大学・高校生 100 (50)円
(中学生以下は無料)
*( )内は20名以上の団体料金
(団体観覧者20名につき
1名の引率者は無料)
*障害者手帳をお持ちの方と
その介護者各1名は無料
*「パリへ 洋画家たち百年の夢展」
(4月19日〜6月10日)をご覧のお客様は無料でご覧頂けます。
問い合わせ:
ハローダイヤル:03-5777-8600
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
芸大には、国から文化財として指定をうけた国宝、 重要文化財が付属資料もふくめて22件所蔵されています。 そのうち、13件がいわゆる古美術の名品です。 なかでも国宝 《絵因果経》 は奈良時代 (8世紀) の貴重な遺品としてよく知られています。 同じく国宝に指定されている 《観世音寺資財帳》 や、 美しい文様が鮮明に残る中国漢時代 (1−2世紀) の 《金錯狩猟文銅筒》 などを展示いたします。
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《絵因果経》 (国宝) 8世紀
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《観世音寺資財帳》 (国宝) 905(延喜5)年
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《金錯狩猟文銅筒》 (重要文化財) 後漢時代
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《菩薩立像》 (重要文化財) 7世紀後半
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平成18年度に修理が完成した重要文化財《小野雪見御幸絵巻》 を修復後はじめて一般に公開いたします。 この絵巻は、鎌倉時代の王朝絵巻の代表的な作品で、 白河院が小野の里に幽居する皇太后歓子(後冷泉天皇后)へ御幸した逸話を描いたものです。 今回は、修復の方法をパネル等で解説するほか、模写類などをあわせて展示することで、 この絵巻の魅力に迫ります。
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《小野雪見御幸絵巻》 (重要文化財) 13世紀後半
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同時開催されている「パリへ 洋画家たち百年の夢」展との連続性をかんがみて、 芸大コレクションの中から明治初期から中期にかけての洋画の名品を選びました。 中でも高橋由一 《美人(花魁)》 は、パリ留学など夢にも考えられなかった洋画濫觴時代の代表作です。 原田直次郎、浅井忠らの明治20年代の秀作をまじえ、 本学西洋画科初代教授の黒田清輝ら以降のパリに学んだ画家たちにつながる日本洋画の系譜をたどります。
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高橋由一《美人(花魁)》 (重要文化財) 1872年
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原田直次郎《靴屋の親爺》 (重要文化財) 1886年
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浅井忠《収穫》 (重要文化財) 1890年
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大学美術館は毎年購入や寄贈等によって少しずつコレクションを拡張していますが、 ここでは近年所蔵品となったものの中から主要な作品を精選してご紹介します。 平成16年4月に亡くなられた加山又造氏から生前に寄贈を受けた晩年の代表作 《倣北宋深山凍林》 や、 途絶えていた銅版画技法「マニエール・ノワール」を復活させた版画家・長谷川潔の初期から晩期にかけての変遷をたどれる作品群などが見所となっています。