日程2013年5月9日(木) - 2013年5月18日(土)
伝来した抄紙技法が、古来日本の風土と環境に育まれ、改良を重ねた料紙の数々として今日まで伝わっております。その中でも、絵画用紙としての和紙の存在は、後世に伝えていかなければならない貴重な素材と考えます。大切に伝承、保存されてきた抄環境や技術者が、需要供給の経済と競争の原理によって、その存続が危ぶまれているのが現在の状況です。その解決には、諸々の困難な問題が存在するのですが、本研究は、絵画表現の重要な基底材料として、和紙を用いる作家(=使い手)の声が、抄紙者(=作り手)に反映され、良質な和紙の継承に寄与出来るものと考えております。本研究の概要は、「楮/コウゾ」「三椏/ミツマタ」「雁皮/ガンピ」「麻/アサ」などを原料として抄造される絵画用紙の、主に《風合い》《定着》《発色》の具合を、作家の主観的な感覚による紙質調査及び研究を行いました。その後、得られた情報をまとめ、抄紙生産者に対して提案を行います。絵画用紙に対する作家好みの独自性が反映することが前提であり、抄紙者との連携による紙質への試行によって、その特性の鮮明化を図ります。平成18年(2006年)に小津産業株式会社様より東京藝術大学日本画研究室へ、和紙研究のご提案があり、平成19年度(2007年度)より受託研究として作業が開始することとなりました。これ迄に直接取材させていただきました越後門出和紙(新潟県)「高志の生紙工房」、小川細川紙(埼玉県)「有限会社久保製紙」、伊勢和紙(三重県)「大豐和紙工業株式会社」、石州和紙(島根県)「石州和紙久保田」ほか、西ノ内紙(茨城県)「五介和紙」の皆様に心より感謝申し上げます。この受託研究「絵画用紙の諸相とその発揮について」は、6ヶ年が経過し、本年度をもちまして締め括りと致します。これまでに5回の経過発表の展覧会を、小津和紙「小津ギャラリー」(東京都中央区日本橋)にて、実施致しましたが、最終回となります成果発表展は、東京藝術大学陳列館(昭和4年竣工)にて開催致します。御高覧、ご教導賜りたくよろしくお願い申し上げます。
関連企画:「出品者によるギャラリートーク」日時:5月11日(土)午後2時-3時場所:東京藝術大学大学美術館陳列館
天候・災害等の状況により、臨時に休館、開館時間の変更を行う場合があります。ハローダイヤル【050-5541-8600】でご確認ください。
© 東京藝術大学大学美術館 The University Art Museum, Tokyo University of the Arts, all rights reserved