企画趣旨
このたび東京藝術大学大学美術館・東京国立博物館・寛永寺におきまして「まだ白く、もう白い - projection for art-Link」と題してイベントを開催します。
このイベントの空間演出インスタレーションに用いられるビデオ映像は、向井知子(東京藝術大学 大学美術館 美術情報研究室)によってコンピュータ・グラフィックスで制作され、屋外に構成された3枚の大型スクリーンに投影されるものです。また、会場の数箇所に設置されたスピーカーからは小倉一平(東京藝術大学
美術学部 先端芸術表現科)によって制作されたサウンドが奏でられます。光の波とも称すべき映像とさまざまな空間の記憶を喚起するようなサウンドは、既知であったはずの現実の風景を劇的に変容させます。それによって観る者は、場所が無限に持つ潜在的可能性に気付かされます。
本プロジェクトの基礎となる空間演出プロジェクト「まだ白く、もう白い」」は、向井によって1995年より開始され、公共空間における映像を使った空間演出の可能性などを探りながら、「空間の知覚」を模索してきました。これまでに教会や美術館での空間演出インスタレーションをはじめ、ビデオ、CD-ROMの制作、講演などドイツを拠点にさまざまな同名プロジェクトをシリーズとして展開してきました。日本の公共空間における空間演出インスタレーション上演は今回が初めてとなります。
今回企画されるこの作品は、東京藝術大学を起点として、東京国立博物館、寛永寺と演出する場を移動してしていきます。東京国立博物館は、美術の杜である上野の中心として、ここで数多く開催されてきた博覧会・美術展や、ひいては美術行政の歴史を見つめてきました。しかし美術の拠点としての上野は近代以降の姿であって、江戸時代には徳川幕府の菩提寺である寛永寺の境内として栄えていました。これら性格の異なる三つの場所で上演を行うことによって、それぞれの場所の性格をひきだし、さらにそれらを有機的にリンク(結びつけて)していくことをこのプロジェクトは目指しています。
本プロジェクトは、展覧会やイベント企画を同時多発的に開催することで上野と谷中という二つの土地を結びつけ、地域の美術・文化活動を活性化しようとする「art-Link 上野・谷中2002」の一環として開催されます。
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